NHK NEWS WEB 新型コロナ自宅療養者に”救世主” 第6波に備える

新型コロナ自宅療養者に”救世主” 第6波に備える
10月04日 22時36分

1396人。

これは、この夏の新型コロナウイルス感染拡大第5波で、医療機関や宿泊療養施設に入れない自宅療養者が鹿児島県で最も多かった日の記録です。全国でも自宅療養者は急増し、治療を受けられないまま死亡するケースが相次ぎました。来たる第6波に備えて、鹿児島や熊本の看護師たちで自宅待機者を支援する取り組みが始まっています。

(鹿児島局記者 松尾誠悟)

【見守るのは各地の看護師】

熊本県に住む女性は先月、高校生の息子とともに感染し、ともに自宅で療養することになりました。

39度の熱が出た息子は、保健所から宿泊施設を手配すると言われたものの、空きがなく入ることができませんでした。自宅の押し入れに隔離して、過ごすことになったといいます。

(熊本県の女性)
「熱がこれ以上、出なければいいなというのと酸素飽和度が低いと死につながると言われて恐怖はありました」

そんな親子の家にある“救世主”が導入されました。それが自宅での症状の変化をいち早く看護師などに伝えるロボットです。

患者はロボットを通じて看護師を呼び出せます。看護師は患者が反応しなくても、患者の様子を確認することが可能に。緊急時には看護師が医師に連絡し、必要と判断した場合は患者のもとを訪問するシステムです。

ベッドの下には生体センサ−を仕込み、血液の流れや呼吸数を計測。そのデータを看護師や医師がオンライン上でモニタリングするのです。

看護師は、変化があるとテレビ電話で表情などを確認しながら健康観察を行います。さらに、全国各地の看護師が協力して、24時間体制で見守ります。

熊本県の親子の場合、日中は青森。夕方から鹿児島。深夜帯は千葉の看護師が受け持ちました。

【患者に与えた安心】

鹿児島で対応にあたった枕崎市の看護ステーションです。親子の情報は、電子ノートで医師と各地の看護師が見られるように記録。円滑な引き継ぎが重要だといいます。

この見守りのチームに緊張感が走った出来事がありました。4日目の午前2時、息子に無呼吸の疑いのある波形がみられたのです。

症状の悪化を考えた看護師は、すぐ母親に電話しました。その後、センサーのずれが原因だとわかりましたが、24時間の見守りで分かった変化でした。

(看護師)
「不安な夜を過ごす人が多いなかで、安心して在宅療養を続けるという意味では、精神的な安心という意味で大きな役割を果たせたと思います」

親子は安心して自宅で療養し、健康観察期間を終えました。

(熊本県の女性)
「1日目だけが心配であとはロボットと機械があったので、私も安心して寝られたというか、変な言い方ですけどロボットと看護師さんに任せていました。ただ、これ以上ひどくなったらどうしようという不安はあったんですけど、お任せしていればいいのかなっていう安心感がありました」

【ネットワークどう広げるか】

もともと、終末期の患者向けに開発されたこのロボットやシステム。自宅で療養する人が急増する中で、福岡県の医療関連会社が考案し、この会社と関係のあった熊本県の医師や枕崎市の看護師が参加することになりました。

今回、患者へのロボットでの見守りを決めた在宅医の本多靖洋さんは、ロボットを活用することで、医師や保健所の負担が減ると感じたといいます。

(医療法人まるほん 本多靖洋理事長)
「お医者さんが中心になってじゃなくてみんなが支えるシステムなんですね。これのいいところは、どこにおってもWi−Fiがつながれば電波があればどこでもつながるんですよね。どこの看護師さんでも同じ患者さんを共有できるというのが強みだと思います」

本多さんは今後の第6波の感染拡大に備えて、行政も含めたネットワークに広げていきたいと考えています。

(医療法人まるほん 本多靖洋理事長)
「早期発見、変化の発見が早くできれば必ず救える命がいっぱい出てきますので、訪問看護ステーション、医療、行政、保健所みんなで戦っていってサポートしていけるようなネットワークができれば自宅療養者は救えていけると思います」

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